投資信託は、日本国内で販売されている金融商品の中で最もポピュラーな商品の一つです。
しかし、投資信託による資産運用がうまくいっている人が多いかいえば、残念ながらそうとはいえないのが現状です。
■金融庁の公表データについて
金融庁は、家計の安定的な資産形成を実現するために、2017年3月30日に「顧客本位の業務運営に関する原則」を公表しました。
これは、金融事業者に対し金融庁が顧客本位の業務運営を実現するための明確な方針を策定し、当該方針に基づいて業務運営を行うことを求めたものです。
そして、各社の取組状況を第三者が比較できるような KPIも設定され、その項目の一つが「投資信託の運用損益別顧客比率」です。
その具体的な数値を金融庁は、2019年1月29日に初めて発表しました。
その結果、なんと数値を公表した96社合算ベースで、5割弱の顧客の運用損益率がマイナス(2018年3月末基準)との内容でした 。
詳細をご覧になられたい方は以下をご参照下さい。https://www.fsa.go.jp/news/29/sonota/20170728/bunseki2.pdf
公表したのは、金融事業者のうち、まだごく一部の会社のみです。
それでこれだけの状況ですので、もし全ての金融事業者が具体的な数値を公表すれば、さらに運損益率がマイナスの割合が増えることも予想されます。
■運用損益率が芳しくない主な理由
これには、複数の要因がありますが、大きなものとしては、日本国内で設定される投資信託が販売会社の売りやすさを重視して作られがちであることが挙げられます。
投資信託を販売する側からすれば、できるだけ販売時に受け取る手数料が高い方がいいですし、お客さまに話しやすい切り口で設定された方が販売もしやすいわけです。(ここの詳細は別の項目で記載しますね)
ちなみに、僕がかつて所属していた証券会社では、お客さまに積極的に販売する投資信託の販売手数料は3%ほどのものが大半でした。
投資信託の運用は、お客さまが支払った代金から手数料を差し引いた金額から開始になります。
ですので、仮に3.24%の販売手数料の投資信託を100万円購入した場合は販売手数料の32,400円を差し引いた967,600円から運用がスタートになります。
さらに投資信託は運用中にかかる運用管理費用(信託報酬)もあります。
たいてい1~2%のものが多いのですが、それも合わせると購入した初年度は4~5万円を手数料として支払うことになります。
日本の金融機関で積極的に販売される投資信託はこのように高コストのものが多くあり、それが投資信託の運用損益率を押し下げている大きな要因の1つです。
■これから新規設定される投資信託について
金融機関にとっては目先の収益を稼がないと会社そのものを存続させていくことができませんので、投資信託の高コスト体質はすぐに変わっていくかは疑問です。
しかし、このような事象は金融庁も認識しており、これから上記のような高コストの投資信託の設定は、時間はかかると思われますが、徐々に減少していくと考えられます。
また、近年は投資信託の販売を販売会社に頼らず、投資信託を設定した会社自身で販売する直販会社も少しずつ増えてきており、金融機関サイドでの投資信託の販売方法にも変化が見られます。
日本の投資信託業界は今なお過渡期にあるということを、投資信託を選ぶうえでぜひ頭の片隅でも置いていただけたらと思います。
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