証券会社でのコンプライアンスの仕事

証券会社でのコンプライアンスの仕事

僕は証券会社勤務時代に主にコンプライアンスに関する仕事をしていました。

カタカタ用語で難しそうと思われるかもしれません。実際にもまさにそうで、難しい上にとても複雑な仕事です(笑)

ただ、みなさんのイメージよりは泥臭いし地味な仕事だと思います。

なぜ、僕が金融教育という観点で仕事をしようと思ったのかという部分にも関連する話になりますので、今回はこの点について以下書いてみます。

コンプライアンスには本部で会社としてのコンプライアンスのルールを作ったり、各営業店から上がってくる問題を考える川上の部署があります。

さらには、各営業店で対顧客の具体的なコンプライアンスルールを実践したり問題に対処する川下の部門があります。

おおまかに分ければ、証券会社のコンプライアンス部門には上記の2つです。

僕はこの両方を経験しているのですが、どちらかというと営業店での川下の分野での業務経験の方がキャリアとしては長いです。

■川上のコンプライアンス部門

川上のコンプライアンス部門では、法律を会社のルールにどのように落とし込んでいくかということを企画する部署の仕事を行っていました。

その部署にいたときは、ちょうど大きな法改正があったタイミングで社内のあらゆる社内規程やルールを全般的に見直しが必要な時期でした。

仕事をする上では様々な法律にじっくり読み込むことが必要でした。

僕は学生時代に司法試験の勉強をしている時期があったのですが、そのときに戻ったかのような気分になりました。

各自条文を読み込んだ後に、会議にてこの条文の書いてあることを実務に落とし込むにはこうしたらいい、ああしたらいい、と会議で部署内の意見をまとめ、関係部署とも調整する。

これが大まかな仕事の流れです。

当該部署は、正直なところある程度の経験を積んだベテランの社員が中心です。僕はその中で珍しく若手社員で配属されました。

両隣の先輩の一方は、元々金融庁にいらっしゃった方で法律なら何でも知っているのではないかと思われるような方でした。

もう一方の先輩は、新卒で本部の中心部署に配属される頭が恐ろしいくらいに切れる方でした。

これはとんでもない亜空間に来たなというのが当初の印象です(笑)。

知識はもちろん実務経験にも乏しくあまり役に立つようなことができない日々が続き、とても苦労しました。

逆にその立場でできることを考え、若手社員用のコンプライアンス教材を作成するなど、日々あれこれ試行錯誤しながらの毎日でした。

こういう仕事をしながら感じたのは、金融業界には様々な規制があり、それを守りながら業務を行うのはとても神経を使うということです。

また、一つのルールを作るだけで関係者がたくさんおり、それぞれのみなさんに新しいルールを理解していただき、各種業務上の調整を行う大変さも身に沁みました。

■川下のコンプライアンス部門

川下のコンプライアンス部門では、各営業店にて日々の各種取引のチェックや本部で作成したコンプライアンス上のルールを現場の方向けに説明したり、適切に実行できているかのチェックを行っていました。

現場にいる営業員は、予算達成のために日々必死になって営業活動を行っています。

その分、ときには行き過ぎた行為が発生しがちなので、本部の川上の仕事に比べてリアルタイム感のある、また違った緊張感のある業務でした。

この業務を行っていると、コンプライアンスのルールというのは営業員の性格に応じて伝え方や実践の仕方を変える必要のある、泥臭い仕事だなということがわかってきました。

もちろん、全体に守らなければいけないポイントもあります。

しかし、その伝え方や表現の仕方に関しては一人一人に応じた対応をしないと理解や納得をしてもらえないことばかりでした。

その一方で、どうしてこのルールがあるのかと思われる形式的なものも徐々に増加していました。

仕事をしていく中で、これでは現場の負担がますばかりで営業活動に支障がでると感じる機会も増えてきました。

この背景には、金融機関の不適切な営業行為を是正するための様々な施策を企画・実施する融庁の方針があります。

不正防止をルールでがんじがらめにするのが本当に適切なことなのか。

そう悩むことが多く、そういう背景でできた新しいルールを営業員に説明するのはジレンマに陥ることも多くありました。

■金融教育の実践

僕は金融機関の営業がより適正に行われるようになれば、お客さまが真剣にお金と向き合うことで、金融リテラシーの向上につながる金融教育を金融機関内で実践できるのではないかと当初は考えていました。

しかし、今の金融機関は、目先の収益を追い求めることで必死になるあまり、お客さまの利益との相反を起こしているのが現状です。

コンプライアンスの強化や実践では、その状況を変えるのは難しいと13年間の金融機関の勤務で実感しました。

結局、金融機関からは離れ金融教育を実践していくモデルのほうが、お客さまのためになると考え、悩んだ末に金融機関を退職しました。

金融機関のいいところも悪いところも知っているのが僕の強みです。

だからこそ、金融機関で営業行為が行われるのに対して自分はどうするかというスタンスで日々考え行動しています。

きっと、金融機関で資産運用をしている方には、セカンドオピニオンとして意見や情報提供ができると思います。

以上のような経験も踏まえ、金融機関からは独立した立場からお客さまと接し、日本の金融教育の実践を図っていきます。

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