年金2000万円問題が話題になりましたが、ご自身老後にどれくらいの資金が必要になるか計算したことがある方はいらっしゃいますか?
おそらく、そこまでやっている人は、ほとんどいないでしょう。そこで、ご自身で老後生活資金を計算する方法を、2回にわけて書いてみたいと思います。
この点、リタイア後に必要な金額は、「リタイア後の支出」から「リタイア後の収入」を引き算して求めることができます。今回は、このうちの「リタイア後の支出」の計算方法について記載します。
■公的機関が算出した老後生活資金
この点、先日の選挙時に話題になった「金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書」の中では、老後生活資金を、およそ26.4万円と計算しています。
一方で、公益財団法人生命保険文化センターが実施した平成28年度「生活保障に関する調査」のデータでは、「生活に必要な資金」に加えて、「ゆとりある生活のために必要な金額」も加味した老後資金を算出しています。
この、「ゆとりある生活のために必要な金額」とは、「旅行やレジャー」、「身内とのつきあい」「趣味や教養」、「子どもや孫への資金援助」、「耐久消費財の買い替え」、「隣人や友人とのつきあい」等、不定期に生じるライフイベントに伴う各種支出も含まれています。
「生活に必要な資金」にこの「ゆとりある生活のために必要な金額」を合計すると、毎月の老後生活資金は34.9万となります。(※1)
■統計データで老後生活資金を計算することへの疑問
この点、26.4万円のデータでは、食料費およそ6.4万円、住居費1.4万円として計算しています。
実際に、全ての高齢無職世帯の方々が、このような内訳の費用になるかといえば、必ずしもそうとは言えないのではないでしょうか。
また、34.9万のデータでは、各費用の内訳は明らかになっていませんが、その中に、「子どもや孫への資金援助」もあります。
これは、すでにお子さんがご結婚されている場合や、お子さんがいらっしゃらないご家庭では不要な費用です。
何を言いたいかというと、これらの統計データが、あなたの老後生活資金として当てはまるとは限らないということです。こういった統計データは、一つの参考になりますが、個々の家庭の実態に即したデータかといえば、必ずしもそうではありません。
比較的若い方で、老後生活にどれくらいお金がかかるかわからない方が、老後背活資金の概算金額を計算する際には参照してもよいでしょう。
ただ、すでにある程度のご年齢の方であれば、ご自身で、老後生活資金を試算して考えた方が、実態に即した老後生活資金を算出できるのではないかと考えます。
■自分自身で老後生活資金を計算してみる
老後生活資金には、日常の生活費とライフイベント費の大きく2つがあります。
生活費の内訳としては、「食料費」、「住居費」、「光熱・水道費」、「通信費」、「家事用品・被服費等」、「保険医療費」、「教育娯楽費」、「交通費」、「交際費」などが挙げられます。
現状の生活でかかっている各費用の金額に対して、お子さんの独立前後で減少しそうなのは、「食料費」、「光熱・水道費」、老後に増加しそうなのは、「保険医療費」、「教育娯楽費」、「交際費」、それ以外はあまり変動しないと考えて試算してみると、目安の金額がわかります。
未来のことですので、あくまで試算であって、正確な金額を計算するこはできません。ただ、ご自身の生活スタイルを、ある程度おさえたデータとして参考にできる数値とはなるでしょう。
これに、ライフイベントに備えた費用を追加します。ライフイベントに備えた費用として考えられそうなのは、「旅行やレジャー」、「子どもや孫への資金援助」、「自動車の買い替え」、「住居の住み替え」などが考えられます。ご自身の場合に、どんなライフイベントがあるか、それにどれくらいかかるか計算して、老後生活資金に加算しましょう。
■平均余命から算出した計算式
以上の計算で1か月の生活費がわかったら、以下の平均余命を参考にした計算式でトータルの老後生活資金を計算します。
仮に夫婦世帯で、夫が60歳男性の平均余命まで生きると考え計算すると、以下の通りです。
●●万(月額)×12か月×23.84(●●には各自計算した一か月の老後生活費を入力)
(厚生労働省「平成30年簡易生命表」により60歳男性の平均余命を23.84年と設定)(※2)
また、夫が亡くなったあとの妻の生活費を、妻が仮に80歳で寡婦になると仮定して、生活費を見積もると、以下の通りです。
●●万×0.7×12か月×11.91(●●には各自計算した一か月の老後生活費を入力)
(厚生労働省「平成30年簡易生命表」により80歳女性の平均余命を11.91年と設定し2人暮らしのときの生活費の7割で生活するものとして設定)(※3)
これも、もちろん、あくまで目安ですので、正確な金額を算定することはできませんが、ご自身のライフスタイルを加味したある程度、信ぴょう性のあるデータになるでしょう。
■まとめ
老後という将来のことは予測できないから、必要金額について考えることは無意味ではないかという意見はよく耳にします。半分はその通りですが、もう半分は誤っています。
将来について正確な予想はできませんが、見える範囲内だけでも見通しだけでも立てておけば、今どんな生活するかも含めて、行動の指針ができます。
そして、将来の予測が今後変更になってもいいように、こういった試算は一度行って終わりではなく、定期的に行うことが大事です。
最初は本当に大雑把な計算で結構ですので、おぼろげながらでもこれくらいは必要になりそうだなということを、ぜひ一度考えてみて下さいね。
※1 出所)公益財団法人生命保険文化センター
平成28年度生活保障に関する調査 P39
https://www.jili.or.jp/research/report/pdf/h28hosho.pdf
※2、3 出所)厚生労働省「平成30年簡易生命表」
主な年齢の平均余命
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/life/life18/dl/life18-02.pdf
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