東京都練馬区のFP(ファイナンシャルプランナー)の佐藤彰です。年末になると、毎年ふるさと納税に関するTVCMやニュースをよく見かけます。
それらの内容には有益な内容も含まれていますが、注意するべき点については残念ながらあまり紹介されていないように思います。
それは目先に利益を取ることで長期的に損をする可能性もあり得るということです。
これは、ふるさと納税に関わらず、お金の問題を考える上で共通のテーマです。そこで、今回はふるさと納税の仕組みについて解説すると同時に、お金全般の問題を考えるときに重要な長期目線の重要性についても書いてみたいと思います。
これを読んですぐに使えるというよりも、お金の教養にまつわる話になりますが、お金について考える上でとても重要な内容なので、あえて1つの記事として取り上げさせていただきます。
ふるさと納税の仕組み
まず、ふるさと納税の仕組み、利用するメリットおよびデメリット等について書いてみます。個人的にはふるさと納税を肯定も否定もしてはいません。いずれにせよ両側面を理解した上で行うことが大切だと考えています。
ふるさと納税とは
ふるさと納税とは、住所地のある地方自治体に納めている税金(所得税・住民税)の一部を自分の好きな自治体に任意で納めることのできる仕組みです。寄附額のうち2,000円を越える部分が、所得税と住民税から上限額まで控除されます。
納税という言葉はついているものの、実質的には寄付の形を取っており、納税先の自治体からはたいていの場合、各自治体独自の返礼品が郵送されます。
ふるさと納税利用のメリット
上記の仕組みから、まず節税になる点が挙げられます。そして、納税先から返礼品を受け取ることもできる点もあります。なお、「ふるさと」とのネーミングがあるものの、自分の出身地等の自治体でなく全国どの自治体にも納税できます。
このふるさと納税は、全国の様々な自治体にて実施されており、返礼品の種類も多種多様で、同じ自治体でも納税の時期によって返礼品も変わることもあるので、選択の幅はとても広いです。
ふるさと納税のデメリット
ふるさと納税を行えば、今住んでいる自治体の税収は減少します。となれば、今住んでいる地域の様々な行政サービスが低下するおそれも出てきます。
実際に大都市ではこういった現象が問題になっており、ふるさと納税制度を見直した方がよいという話も様々なところで耳にします。一方で自治体によっては過度な返礼品を用意して各所から批判されたり、国と裁判になった自治体もまたあります。
こういった経緯から制度の改正が今後さらに行われていく可能性もあります。
ふるさと納税をするときに念頭に置いてほしいこと
このふるさと納税のメリットについては、様々な場所で宣伝されていて聞いたことがある方も少なくないと思います。ただ後者のデメリットについては反対にあまり言われることがなく、ふるさと納税を実施するときに抜けがちです。
ふるさと納税を実施すること自体は悪いことではありません。自分の税金を納める自治体を選べるというのは、税金について考えるきっかけになりますし、実際に素敵な返礼品をいただくこともできます。また好きな自治体を応援するという、目には見えない価値があることもまた事実です。
ただし、短期目線だけでこういう視点ばかりに目が行ってしまえば、長期的にはご自身に返ってくる可能性もなくはありません。ふるさと納税をするにしろしないにしろ、この点も考慮した上で選択することが大切です。
これはふるさと納税だけの話ではなく、お金の問題を考えるとき全般に言えることです。以下、家計管理と資産運用の場面についても書いてみます。
目先に利益に走る家計管理
家計管理の場面でも短期目線だけで考えると、行き詰ってしまう可能性があります。それは、目先の安さだけを見て買い物をしてしまうケース、反対に無理な節約をしてしまうケースの2つが代表例です。
出費、節約と場面はそれぞれ反対ですが、目先の利益を目にがってしまい、長期的な目線が抜けてしまって損をする可能性があるという注意点は、上記のふるさと納税をするときに書いたことと同じです。
目先に利益に走った家計管理の失敗例
買い物をするときはできるだけ安く買おうとします。その方が無駄な支出を減らし家計改善になるからです。
これはもちろん、当然のことではあります。ただ安さだけをみて買うと長い目でみてかえって損をすることも少なくありません。
個人的には社会に出たばかりの頃に、スーツや革靴を安く買ってすぐにだめにしてしまってかえって出費がかさむという経験があります。また典型的な例としては、バーゲンやセールなどで必要がないのに安いから買ってしまうというのはよくあるケースです。こういった経験をされたことのある方も少なくはないのではないでしょうか。
また、家計管理では一般的に無駄使いをなくしていくため、場合によっては今まで使っていたお金を使わないように節約する場面も多く出てきます。
このときに、できるだけ多く支出を削減できた方が家計管理的にはよいのは確かにそうです。
しかし、長期目線では支出をカットし過ぎることで、ストレスを抱えてしまい、その解消のためにかえって無駄な出費が増えるおそれもあります。また、制約しない方がよい出費や将来のための自己投資の金額を減らしてしまうことも場合によってはマイナスになりかねません。
短期志向の資産運用の場合
家計管理だけでなく、資産運用においても同じようなことがいえます。資産運用はお金を増やすことを意図して行うわけですが、もちろん、始めてみてすぐにお金が増えるに越したことはありません。
ただ、実際に短期で利益が出て投資がうまくいくというケースはまれです。マスコミ等が取り上げる情報では、短期で大きく儲かった方の話がクローズアップされがちですが、それは一部の例外であり、実際に目指す対象とはいえません。その具体例についても以下記載します。
短期目線で損をするお客さま
証券会社勤務しているときに資産運用で損をしている方の典型例がまさに短期志向でした。
投資をしてすぐに利益を出そうとしてしまうために、必要以上にリスクの高い商品を購入したり、自分の理解が不十分な商品を購入してしまい、その後の管理をうまくできなくなる、という事態に陥り、結果的に損をしてしまう方が少なくありません。
仮にそこで利益が出たとしても同じようなことを繰り返すうちに、大きく損をする取引が発生し、トータルでは損をするというのが証券会社で取引をするお客さまには少なくありませんでした。
資産運用では運用期間が短くなればなるほど予想は難しく、投機的な性質を帯びるようになります。そこに余裕資金以上の資金を投じてしまえば、かえって苦しい思いをすることになるのは目に見えているはずですが、ついやってしまいがちです。
お金の問題を考える上で欠かせないポイント
お金の問題を考える上で欠かせないポイントは長期目線だという趣旨で書いてみましたが、これは言い換えれば、目に見える部分だけでなく逆に見えには見えにくいものまで見るようにするということでもあります。目先には見えない分、この見えにくい部分を意識する点が大切になります。
ふるさと納税では節税という目先に利益、家計管理では節約という目先に利益、資産運用では目先のもうけという目先に利益、ここだけをみて行うことでかえって損をする場合もあることは共通しています。
もちろん、それ自体悪いころでなく、有用である場合や必要性が高いシーンもありますが、短期目線と長期目線の2つを意識しているかどうかで、同じ行動でも意味合いが違ってきます。
今回例として挙げたのは、3つですが、他の場面でも同じようなシーンはたくさんあり得ます。
年末年始は何かとお金を使う機会が多くなりがちですが、こういった目線も意識しながら、ぜひ過ごしてみてください。
こういった長期目線での家計管理や資産運用等のご相談もございましたら、お気軽にご連絡くださいね。(オンライン相談も可能ですので、地方にいらっしゃる方のご相談ももちろんお受けいたします)