東京都練馬区のFP(ファイナンシャルプランナー)の佐藤彰です。みなさんはお勤め先の年金はどのようになっていますか?
昨年の日本経済新聞にて、確定拠出型の年金加入者の数が確定給付型を上回った旨が報道されました。
ご参考:年金加入「確定拠出」が「給付」を逆転 老後へ自ら運用 加入1000万人に迫る 日経2020年12月19日記事
この確定拠出年金に関しては、確定拠出年金法第22条により企業に従業員の投資教育を実施する旨が義務化されています。しかし、罰則がない上にそこまで手が回らない企業も少なくないせいか、資産運用の知識を学ぶ機会が必ずしも十分に提供されているとはいえません。
この観点から、実際に制度が導入されているものの、どんな制度かよくわからないという方も多いのではないかと思い、今回は企業の確定拠出年金の仕組みについて書かせていただきます。
確定拠出年金制度の導入背景
そもそも年金には公的年金と私的年金の2つがあります。公的年金があれば、他の年金は不要と思えるかもしれません。ただ公的年金だけでは老後生活資金をまかなうのはたいていの方は厳しい状況にあります。そこで生まれたのが私的年金です。私的年金にも様々なものがありますが、確定拠出年金もこの一種です。
確定拠出年金というとメディアでよく耳にするのは、iDeCoだと思います。ただ確定拠出年金には個人型と企業型があり、iDeCoは個人型のことを指していて、企業年金として実施されているのが企業型の方です。企業型の確定拠出年金は一般的に企業型DCと呼ばれていますので、以下この表記にて説明させていただきます。
企業型確定拠出年金(企業型DC)導入企業の従業員に必要なこと
企業型DCが実施されている企業にお勤めの方であれば、こういう年金制度が導入されている場合に何が必要になるかが関心事だと思います。
結論から申しますと、これは老後生活資金について企業は面倒を見てはくれず、自助努力で資産設計しなければならないということです。
かつては定年まで働けば勤務先から年金が出るので、老後資金はさほど気にせずお仕事に集中することができました。しかし、今はそうはいきません。働きつつ老後のライフプランを考えながら老後資金のプランニングを行う必要があります。
そしてその設計については、様々なリスク管理も要します。なぜなら、企業型DCは金融商品で資産運用することが必要だからです。
運用のリスクが嫌であれば、本来は投資をしないで老後資産を設計する方法もなくはありません。ただ企業年員として実施された場合は、選択型DCの場合を除くと、運用するかしないかの選択権そのものがなく、資産運用を事実上強制されるケースも多く出てきます。これが一般的な資産運用との大きな違いであり、企業型DCについてしっかり学ぶ必要のある理由の1つになります。
企業型DCの内容
現役時代から資産運用が必要になるとはいっても、企業型DCの内容について理解が十分でない方もいらっしゃるかと思います。その中身についてここでは説明いたします。
企業型DCでは、毎月資産運用に必要な資金が勤務先より拠出されますが、従業員側でも資金を追加するマッチング拠出が導入されている企業もあります。運用可能な金額についてある程度従業員に裁量があるケースが多いです。
その資金を自ら金融商品を選んで資産運用する形になりますが、一般的な資産運用と違うのは選べる金融商品があらかじめ勤務先ごとによって限定されていることです。勤務先は確定拠出年金として運用可能な商品を、制度導入時にあらかじめ決めてから実施しますので、従業員が選べる商品は限定的になります。ただその商品は、たいてい投資信託になりますので、いくつかのタイプから投資信託を選ぶ形なります。
企業型DCで金額設定する際の注意点
企業型DCは従業員が退職した後の老後生活資金を確保するためのあくまで「年金」です。ですので、運用の途中で資金を引き出すことは原則としてできません。最低でも60歳までは引き出せませんので、金額の設定時にはこの点に留意する必要があります。
また、金額の設定変更は1年に1回しかできません。また変更手続きにも時間を要します。この点を金額設定時に考慮して設定することも大切です。
さらに、運用は加入期間中ずっと行われるため、いったん運用をストップすることもできません。相場が下がってきたからいったん現金も戻すこともできませんので、リスク管理にも注意を要します。
企業型DCの商品の選び方
基本的には一般的な資産運用と同じです。資産運用の基本は長期・分散・積立投資です。この点、企業型DCは長期と積立はデフォルトなので、この分散をどう設計するかが大事になります。
リターンを狙うならある程度リスクをとった運用商品を選ぶことになりますし、リスクが気になる場合はリターンを大きく狙わずに金融商品で運用するとよいです。
ただ老後までの長期の運用になりますので、運用の時間の味方につける観点で若い方がある程度リスクをとった運用を行い、老後が近づいてきたら値動きの小さいリスクを抑えた商品に変更するのが一般的です。
運用の後期になってくると受け取りのタイミングで相場が下落して損をするリスクも考慮に入れる必要がありますので、企業型DCでは運用する時期によって選ぶ商品が変わってくることにも留意が必要です。
企業型DCでおすすめしない商品
なお、企業型DCで選べる商品には定期預金や保険などの元本確保型と呼ばれる金融商品もあります。リスクは低いのですが、その分ほとんど資産は増えません。60歳まで引き出しが基本的にできない資産を元本確保型で運用するメリットはほぼありませんので、選ぶのはおすすめしません。
これが個人型確定拠出年金であれば、掛金が全額所得控除になる分、運用自体で資産が増えなくても選択する余地もないわけではありません。ただし企業型DCでは掛金はマッチング拠出しなければ、企業負担になるため、こういったメリットを享受することもできません。
企業型DCで慎重に検討すべき商品
また、投資信託の中でも運用担当者が独自の目線で投資信託に組み込む銘柄を決めるアクティブ型は少なくとも運用のメインには据えない方がよいでしょう。
これはある程度相場を当てにいく投資になりますが、プロでも相場を当てるのは困難です。これから老後までの長い期間ずっと当て続けるとなると現実的には不可能に近いです。アクティブ型に投資する場合は大きく資産を減らす場面がどうしても出てきます。
もしアクティブ型の投資信託を選ぶ場合は、運用割合の一部に留めるのが無難です。運用のメインは市場平均を目指すインデックス型の投資信託にして、リスクとリターンとのバランスがとれる形が理想的です。
まとめ
企業型DCはみなさんの大事な老後生活資金を確保するための年金であるにも関わらず、十分に周知されている制度化というと、そうとはいいがたい側面があります。その分、自ら積極的に学ぶと同時に運用開始後の資産管理も行う必要があります。
導入企業にお勤めの方は、まず現状の運用状況についてチェックして運用状況が概ね良好かどうか確認すると同時に、選定商品や金額なども調整が必要かどうかもぜひ確認してみてください。
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