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「顧客本位の業務運営に関する原則」の改訂に伴い変化する金融機関の金融商品販売

「顧客本位の業務運営に関する原則」の改訂に伴い変化する金融機関の金融商品販売

金融庁にて公表されている「顧客本位の業務運営に関する原則」が先月改訂されました。

ご参考:金融庁ホームページ

当該原則は、金融事業者に対し金融庁が顧客本位の業務運営を実現するために方針を作り、その方針に基づいて業務運営を行うことを求めたものです。

金融事業者による顧客本位の業務運営を一層進めることを目的として、今般、この「顧客本位の業務運営に関する原則」が改訂されました。

今回はそこから金融機関の金融商品販売がどう変わっていくかに関する考察について書いてみたいと思います。金融事業者の方にとって参考になる内容ですが、将来のために資産運用したい方など、付き合う金融機関を選ぶ参考にもあると思いますので、ご興味のある方はお読みいただければ幸いです。

■「顧客本位の業務運営に関する原則」が策定されて何がわかったか?

「顧客本位の業務運営に関する原則」が公表されてから、各金融機関で販売している投資信託の運用パフォーマンスが可視化されるようになりました。

当該原則公表後、最初に公表されたデータによると、数値を公表した金融機関の5割弱の顧客の運用損益率がマイナス(2018年3月末基準)という驚くべき事実が判明しています。

私自身、証券会社勤務時代に、コンプライアンス部門に主に所属し、社内の営業ルール企画や金融商品販売のモニタリングを行っており、このデータを見たときは「やはり、そうか」という思いとともに「これは本当にまずい」と感じたのを今でも覚えています。このデータから見える金融機関の課題については過去の記事をご参照ください。

こういう数値の公表まで求められ(厳密には出せ、と命令しているわけではありませんが、事実上は求めているといえます)、金融機関自体、金融庁の本気度を感じると同時に、今までの金融商品の販売手数料で稼ぐビジネスモデルに限界を感じていることもあり、ここ数年で顧客本位の新しい試みを少しずつ見られるようにはなってきています。

ただ、まだ積極的に公表しているというよりも、金融庁に指導されているからこういった数値等を公表している側面もまた否めない状況です。金融庁自身、それを感じていることが今回の改訂の背景の1つにあるといえるでしょう。

■「顧客本位の業務運営に関する原則」が改訂され何が変わるか?

「顧客本位の業務運営に関する原則」には7つのものがあります。このうち大きな改訂だと思われるのが、以下の2つです。

「金融事業者は、顧客との情報の非対称性があることを踏まえ、上記原則4に示された事項のほか、金融商品・サービスの販売・推奨等に係る重要な情報を顧客が理解できるよう分かりやすく提供すべきである。」(原則5)

お客さまへの情報提供に関する項目

金融事業者は、顧客の資産状況、取引経験、知識及び取引目的・ニーズを把握し、当該顧客にふさわしい金融商品・サービスの組成、販売・推奨等を行うべきである。(原則6)

お客さまにあった商品・サービスの提供に関する項目

原則の文言自体は過去の変化はありませんが、その原則に関連した注意事項について追記される形で改訂されています。

●重要情報シートに利用した顧客との対話

原則5に関連したて、金融庁はお客さまへのわかりやすい情報提供のために「重要情報シート」を利用することを1つの方法として明示しています。

ご参考:当該原則改訂に関するパブリックコメント(3つ目の回答部分)

https://www.fsa.go.jp/news/r2/singi/20210115-1/01.pdf

当該書面のサンプルは金融政策に観する有識者会議である「金融審議会 市場ワーキング・グループ」にて公表されています。(下記リンク先最後部)

https://www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu/tosin/20200805/houkoku.pdf

当該書面を金融庁が例示している趣旨は、金融機関等とお客さまとの対話を促ことです。目論見書や契約締結前交付書面などのような重要事項をわかりやすく説明するという趣旨とは異なる点が特徴的です。

私自身、証券会社で営業員とお客さまとの会話を聞いていて、金融サービス提供時には、どうしても営業員による一方的な説明になりがちで、リスク等について丁寧に説明しようとするあまり時間も長くなりがちです。一方でお客さまとしてはいろいろ話されて、ややもすると、何を質問したらいいかわからなくなる方もいらっしゃるようにも感じることがありました。

金融機関等に求められること

今後はこういったお客さまとの面談を少なくするために、各金融機関で様々な工夫が行われることになります。サービス提供側としては、今まで以上に顧客とのコミュニケーションを円滑にできる営業人材の育成が急務となるでしょう。今までならスムーズに重要事項について説明できる営業員が優秀と判断されていたかもしれませんが、それだけでなく双方向性のあるコミュニケーションスキルもまた必要となります。

逆に金融機関を選ぶ側としては、金融機関の職員とのやり取りにおいて、気軽に質問できるような場を作っているか、お客さまから質問しやすい雰囲気を出しているか、どんな質問についても辛抱強く付き合ってくれるか、という観点はチェックポイントとなるでしょう。それと同時に、わからないことはしっかり営業員等に質問し確認することが、より顧客側にも求められるという側面もないとはいえません。

●想定顧客の明示および関連金融商品との比較

こちらも原則5に関連した内容です。ここから、金融機関等はどの商品がどのようなお客様に向いているか明示することが必要となります。そして実際に提案する際には、関連金融商品との比較が必要となります。

ご参考:https://www.fsa.go.jp/news/r2/singi/20210115-1/01.pdf
(20つ目の回答)

「ノルマためにお客様に特定の商品を買ってもらう」、「興味持って入れていれば買ってもらっていい」。例えば、こういう営業は今後より行えないようになっていくでしょう。もちろん、今もこういう手法は論外ですが、日々の営業目標に追われている営業員からすれば、場合によってはこのような営業にもなりがちであることもまた事実です。

また他の金融商品との比較も必要ですので、例えば、貯蓄性のある保険を提案する場合は、同じく資産を増やすための金融商品である投資信託と比較した形で行われるようになっていくことでしょう。ここから例えば、外貨建て保険の手数料が高いから投資信託ではなくこちらを提案するという営業手法は通用しないことになります。

お客さまからみれば、金融機関の営業員の提案が手数料稼ぎ目的でないかをこういった観点でチェックしやすくなるといえます。ここもぜひより注視していっていただきたい項目です。

ライフプランおよびポートフォリオにも配慮した提案

原則6と関連して今後は、お客さまのライフプランを把握し、それにあった商品・サービスがより求められるようになります。同時に資産のポートフォリオも加味した提案を行われることが必要となります。

https://www.fsa.go.jp/news/r2/singi/20210115-1/01.pdf
(12つ目の回答)

こう書くと当たり前のことに見えるかもしれません。しかし、金融機関等にとっては今目の前にある商品・サービスを販売する、ここの商品単体がお客さまに合っているか、を確認することで精いっぱいになっている側面も否めません。そういった背景もあっての提案ではないかと考えています。

これは、金融機関等にとって、資産に関するより踏む込んだ情報収集が求められることを意味します。一方で、お客さまからすれば、こういった情報まで営業員に提供するのは勇気が要ることです。

まさに信頼関係がお互いにとって今後より重要になることは明白です。金融機関等の営業員からすれば、お客さまと信頼関係を築くための営業活動だけでない様々な創意工夫が求められるでしょう。お客さまからすれば、信頼できる営業員等がいれば、こういった踏み込んだ情報を提供することで、より踏みこんだ提案を期待することも可能となります。

●まとめ

「顧客本位の業務運営に関する原則」が公表されたときにも感じましたが、改訂により金融機関等は今後「本物」しか生き残っていけないということがより鮮明になったと思います。コロナ禍ということもあり、今回の改訂が事業の再編等にも影響を及ぼす可能性もないとはいえないとも感じています。また広い意味で私も金融商品販売は行わないとはいえ、金融事業者の一端でもあるので、改めて身の引き締まる思いです。

金融機関を選ぶ側によっては、不誠実は営業員をスクリーニングしやすくなっていきますので、目の前に営業員等が「本物」か、上記の記載も参考にぜひ見極めてみてください。

こういった証券会社でのコンプライアンス業務経験を生かし、金融機関の金融商品に関する提案がこれらに基準にかなっているか、本当に自分に合っているか、セカンドオピニオンを提供する形でお話をうかがうことも可能ですので、ご用命の際は、お気軽に以下のお問い合わせよりご連絡ください。

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