東京都練馬区のFP(ファイナンシャルプランナー)の佐藤彰です。
時代のトレンド(DX、ESG、バイオ等)を重視したテーマ型の投資信託(以下、テーマ型投信と記載)を金融機関で販売する傾向が下火なったと思いきや、2020年度は再び増加しています。金融庁が顧客本位の業務運営の取り組み状況について調査した結果によると、大手証券等の投資信託販売額の約70%がテーマ型投信という状況です。
そこで、改めてテーマ型投信を購入する場合の注意点について書いてみたいと思います。
テーマ株投信の問題点
テーマ型投信は、運用成績が非常に好調であり、それが販売状況の変化の一因と考えます。ただ、テーマ型投信は一般的な投資信託とは性質を異にしています。投資するにしろ、しないにしろ、その特徴をよく理解しておくことが必要です。
集中投資でリスク分散されていない
投資信託は複数の金融商品をパッケージにしているため、一般的に分散投資によるリスク低減効果があります。しかし、テーマ型投信は同じテーマの主に株式を中心に構成されているため、リスク分散があまり効いていません。
他のファンドとの違いが不明瞭
テーマ型投信の構成銘柄を見ると、結局、他の一般的な投資信託と投資している銘柄が似ている場合があります。その意味で、テーマ型投信は他の投資信託との違いがやや不明瞭です。特にESG投信にはその傾向があります。EDGは、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の頭文字を取って作られた言葉で、持続可能性に配慮した活動をしている企業に投資をするファンドです。
この点、金融庁も同様に問題意識を持っており、ESG投信の実態が曖昧にならないようにルールを整備する動きもあります。
高コスト
テーマに合った銘柄を選ぶ手間がかかるため、テーマ型投信は一般的に高コストです。テーマ型投信で利益を上げるには、そのコストを上回る利益を上げ続ける必要があります。数年間上回るという話ではなく、運用期間中ずっと上回り続ける必要がある点がある点がポイントです。
運用の持続性に疑問
テーマ型投信は値動きの動きが激しいため、利益が芳しくなくなると一気に解約される傾向にあります。運用するうえで支障が出るケースもあり、運用の持続性にも心配要素があります。
実際にこの10年で償還になる投資信託の4割はテーマ型も含まれるアクティブ型投信という結果になっています。
ご参考:モーニングスターホームページ:10年以内に4割以上が償還のアクティブ、グローバル株式の最終的な勝率が1割以下
なお、利益が短期間しか出ないという点も一般的に問題視されますが、最近のテーマ株投信の中には息長くある程度の収益を出しているファンドもあり、ここは一概にはそうとはいけないと評価することもできそうです。
具体的なテーマ株投信の具体例:グローバルESGハイクオリティ成長株式ファンド
例えば、2020年7月20日設定され、純資産総額1兆円を超えている人気ファンド「グローバルESGハイクオリティ成長株式ファンド」が挙げられます。
このファンドの組入銘柄の一位はマスターカード、アマゾンの7.9%です。(2021年6月時点)組み入れ銘柄の上位10位以内の銘柄の過半数は情報・通信系の米国企業で、販売手数料が 購入時手数料率(税込)3.3% 信託報酬1.85%という状況です。
これらの銘柄は、他の米国株ファンドやIT系のファンドでも組み入れやすい銘柄です。また銘柄が米国のIT企業に偏っており、高コストな状況にあります。
運用自体は好調ですが、今後大量の解約が出ないか、価格が急落しないかなどは注視する必要はあります。
テーマで投資をしたい場合の投資方法
テーマ型投信は、確かにテーマ自体は魅力的なテーマを扱っていますし、一概に運用成績が悪いと言い切ることもできません。多少投資に慣れていて、+αの運用成績を狙う方にとっては1つの投資の方法かもしれません。
最近はテーマ型でもコストを抑えたファンドも一部出てきているので、そういうタイプを調べてみる方法もありますし、ETFという形でテーマに投資する方法も低コストでテーマに投資できる方法です。あとはシンプルにテーマに投資をしたい場合、テーマに関連のある個別株に投資をするという選択肢もあります。
ただし、上記の通り、様々な課題もあるのも事実なので、投信の名前だけで判断するのではなく、その中身を販売用資料や目論見書などで慎重に判断することが必要です。そして、投資する場合もメインというよりも一部の資金をサブとして振り分ける程度が無難です。
なぜ金融機関はテーマ型投信を販売するのか?
私自身、証券会社に10年以上所属していて、まさにずっとこういうタイプの投資信託をお客さまに販売をしてきました。なぜなら、証券会社の収益源が手数料でその手数料を稼ぐのにもってこいだからです。社内での役割は営業で販売するのではなく、販売状況をチェックする立場でしたが、いかに手数料の高いテーマ型投信を売るかという目標があって、それからお客さまにアプローチするという形でした。
見方によっては金融機関が手数料を獲得するために作成されたファンドだと感じる方もいらっしゃるかもしれません。実際にそうなって困る方が出てこないように、今は金融機関の外にいる達ではありますが、引き続き注意が必要な商品については積極的に情報発信をしていきます。
テーマ型投信だけに関わらず、ライフプランに即した運用相談に関するご相談を様々なお客さまからご用命をいただくことが多い相談内容です。ご相談やお問い合わせをご希望される方は以下のボタンよりお気軽にご連絡ください。