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がん治療とお金~がん保険は本当に必要か?

がん治療とお金~がん保険は本当に必要か?

東京都練馬区のFP(ファイナンシャルプランナー)の佐藤彰です。

民間業者の保険に加入するべきかどうかという話は昔からよく聞きます。中でもがん治療に特化した保険が話題になることが多く、関心を持っている方が多いように思いました。

この点、一生涯でがんに罹患する率が高い、保険会社のCMなどでよく耳にします。言っている内容は間違っておらず、一生涯でみれば無視できない高さではあります。

また、アメブロなどでがんに罹患したことを告白したり、がん患者としての日々をつづる芸能人がときおり話題になりますし、抗がん剤治療でつらいという話を聴く機会があるかもしれません。

ただ、がんは昔と違って治療できない病気ではありません。末期がんなどの場合を除いて実際にがんそのもので亡くなる方はそこまで多いとはいえません。また、がんにも種類によって病状等が異なるため、一概に語ることもできない側面もあります。

だからこそ、がんがどんな病気なのか、医療の専門家ではない人でもいくらかは知っておいた方がいいと思います。そこで、まずはがんがどんな病気かについて書き、その後にがんにどれくらいお金がかかるのかなど、FP的な観点について書いていきます。

がんはどんな病気?

がんは「悪性腫瘍」と呼ばれることがあります。腫瘍とは、体の中にできた細胞のかたまりです。正常な細胞は、体や周囲の状態に応じて、増えたり、増えることをやめたりしますが、何らかの原因でできた異常な細胞が、体の中に細胞のかたまりを作ることがあります。これが腫瘍です。

悪性腫瘍とは、このような腫瘍のうち、無秩序に増殖しながら周囲にしみ出るように広がったり(浸潤)、体のあちこちに飛び火して新しいかたまりを作ったり(転移)するもののことをいいます。(国立研究開発法人国立がん研究センターがん対策情報センターホームページより要約引用)

正常な細胞ががん化する大きな要因としては、細胞の増殖などに関わる遺伝子に起こる変異の蓄積といわれています。その要因は、生活習慣によるものが多いようです。国立がんセンターに調査によると、日本人では、男性のがんの53.3%、女性のがんの27.8%は、生活習慣や感染が原因でがんとなったと考えられています。そのうち、大きな原因は、喫煙(男:約29.7%、女:約5.0%)と感染(男:約22.8%、女:約17.5%)で、その他のものは比較的小さいと報告されています。

ご参考:国立研究開発法人国立がん研究センターがん対策情報センターホームページ がんの発生要因

がんは未然に予防できるか?

がんが生活習慣による部分が大きいのであれば、生活習慣を改善することががんの予防策になります。国立がんセンターのホームページでも、がんの予防のために、「禁煙」「節酒」「食生活」「身体活動」「適正体重の維持」の5つを挙げており、これらを実践することでがんの罹患率が半減近くまで低減する予想が行われています。

なお、がんというと遺伝子が関わっており、家系的にがんになりやすい人がいるという話も聞きますが、実際に遺伝子がどのようにがんに関連しているかはまだ不明な点が多いようです。実際に国立がんセンターのホームページには遺伝子ががんの要因だと明記されていません。ただ、治療には遺伝子情報に基づく個別化治療が始まっており、治療のために遺伝子検査をする方法も出てきています。

引用:国立研究開発法人国立がん研究センターがん対策情報センターホームページ 科学的根拠に基づくがん予防

ご参考:同ホームページ 個別化治療とがん遺伝子検査

がんにかかるお金

がんには、大きく分けて治療のお金とそれ以外のお金の2つがあります。

がんの治療にかかるお金

治療にかかるお金には、さらに、保険適用ありのもの、そうではないものの2つがあります。

まず保険適用ありの費用は、手術代、検査代、薬代といった直接的な治療費です。費用全体のうち患者さんが支払う割合は、70歳未満の成人では3割などと自己負担割合が決められ、残りは公的医療保険から支払われます。

保険適用なしの費用は、開発中の試験的な治療(先進治療など)、試験的な薬(治験)、差額ベット代、入院時の食事、診断書などの文書作成費用などです。

がんの治療以外にかかるお金

自分のためにかかるお金と家族のためにかかるお金の2つがあります。自分のためにかかるお金は、ウイッグ代、通院費、保険適用外の漢方薬、健康食品・サプリメント、入院時の日用雑貨(パジャマ、肌着等)などがあります。

ウイッグや肌着は盲点だった方が多いのではないでしょうか。私自身、盲点で実際にがんサバイバーの方の本を何冊か読んで気がついた出費でした。

家族のためにかかるお金は、お見舞い費用があります。また、がんに罹患したことで家族の家事負担を軽減するために、外食・惣菜費やベビーシッター代金などもかかってくることもあります。

ここは家族形態によって、また家族の中で誰ががんに罹患したかで費用が変わってきます。

がんにかかるお金を考えるときに注意点

がんは入院治療で大金がかかるイメージがあるかもしれませんが、実際には入院以外でかかるお金の方が大きな出費になりがちです。先進医療で莫大な金額になると世間ではいわれることも多いですが、先進医療を利用したがん治療は、非常にレアなケースです。(先進医療の大半はがん治療以外となっています)厚生労働省の調査によると、がんの入院治療費は以下の通りです。

胃がん     約64万円
大腸がん     約65万円
直腸がん     約74万円
肝がん      約61万円
肺がん/気管がん 約67万円
乳がん      約57万円
子宮がん     約63万円
その他のがん   約65万円
白血病      約152万円
厚生労働省ホームページ平成30年度医療給付実態調査のデータより当事務所にて算出

医療費が現役世帯で3割負担であり、さらに医療費には高額療養制度により上限があることを考えると、入院治療の費用は比較的少額で済みます。例えば、現役世帯の年収500万円の方であれば、1ヵ月に支払う医療費の上限は約9万円です。もちろん、この費用に保険適用のない食事代、差額ベット代などがかかりますが、それでも貯蓄から出せない金額ではありません。

ご参考:高額療養費

ただし、最近のがん治療は通院がメインになっており、入院した場合も短期化が進んでいます。入院、手術で終わりでなく、通院がメインになり、場合によってはそこで再発する可能性もあります。治療が長期間する可能性があるのが、がんにかかるお金のリスクです。

治療が長期化すると、医療費がかさんでいくことだけでなく、がんに罹患前の仕事のパフォーマンスが出せなくなり、収入が減少してしまいます。

がんにかかるお金はどう用意するか?

基本的には、医療保険の考え方と同じです。

日本の場合は公的医療制度があるため、その制度である程度のカバーは可能です。ですので、まずは生活防衛資金を貯めておく、次に公的医療制度の知識を身につけていくことが大事です。

それ以外に重要なのは、勤務先の福利厚生です。福利厚生というと調べてみると、意外と知られていない制度が意外と多くあります。また具体的な制度がない場合も人事部に掛け合って相談をしてみることで、何か方法を考えてくれるケースもあります。

がんになった社員のサポートは人事部も慣れていないケースが多く、実際にそういう事態になったことで個別具体的な対応を検討してくれる場合もあり得ます。がんサバイバーの方を調査した書籍を調べてみると、こういったところで思わぬサポートを受けられたという方のお話も見つけることができました。がんが治療できない病気ではない現代においては、がんになったからといって必ずしも退職する必要はありません。

がん保険には加入するべきか?

がんには上述の通り、多種多様なタイプがあり、それぞれの病状等も異なります。仮にがん保険に入ったからといって、がんになったときにピンポイントで自分にぴったりの保障内容が得られる保障はありません。

一方でがんになってどれくらいのお金がかかるか、また罹患後にどれくらい収入が下がるのかについては事前に計算しづらい側面があることも事実です。

貯蓄がどれくらいできているか、ご自身がどのようなお仕事をしているか、家族の中で自分がどのような位置づけか、年齢は何歳か、など考えつつ、がん保険に加入するメリットおよびデメリット相互を念頭において検討してみてください。

ただがん保険への加入を考える前に、生活習慣の見直し、貯蓄、公的医療制度、福利厚生の把握が優先事項ですので、加入する場合もまずはここをしっかりチェックすることは忘れないでください。

最後に

このようにがん保険への加入を検討する際には、様々な前提知識が必要ですし、ご自身でがんのリスクをどのようにとらえるかという価値観の側面も大事になります。

私自身、情報提供だけでなく、お一人お一人がどんなライフスタイルを大事にしているか、お金の側面以外の点も丁寧にヒアリングさせていただくことを大事にしています。

がん保険の加入の有無、見直し等のご相談をお受けしています(保険販売は取り扱っていませんが、考え方や方向性のアドバイスは可能です)ので、個別にご相談をご希望される方は下記のボタンからお気軽にご連絡ください。

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